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大阪地方裁判所 昭和43年(ヨ)2008号 決定 1968年9月04日

申請人 全建設省労働組合近畿地方本部 外一名

被申請人 近畿地方建設局長

訴訟代理人 広木重喜 外一二名

主文

申請人らの申請をいずれも却下する。

申請費用は申請人らの負担とする。

理由

一、本件申請の趣旨は「被申請人は別紙目録表示の組合掲示板或いはその掲示物を実力で移動撤去し、或いは掲示板を使つての組合の宣伝活動を妨害してはならない。」との裁判を求めるにあり、その理由の要旨は、

(一)  申請人全建設省労働組合近畿地方本部は建設省に働く職員で組織される全建設省労働組合の全国九地方本部の一つであり、申請人全建設省労働組合近畿地方本部本局支部は、近畿地方建設局本局勤務の組合員で組織されているもので、右近畿地方本部の下部組織である。被申請人は別紙目録掲示板等の存する大阪市東区大手前之町合同庁舎一号館七、八階の近畿地方建設局使用部分につき庁舎管理の権限を有するものである。

(二)  申請人らは別紙目録表示の本件掲示板につき占有使用権を有する。即ち、申請人らは当局より何等の制約を受けることなくビラ、ポスターを掲示して組合活動を行つていたところ、昭和三七年一二月二六日付「建設省庁舎における庁内取締りに関する訓令」(右同日建設省訓令第一六号)の制定に伴い申請人らの右宣伝表現活動に対する制限の動きが生じたことから当局との間で団体交渉の末、翌三八年四月一三日までに合意に達し、この結果として当時までに当局によつて設置された本件掲示板は爾来申請人らにおいて組合活動のためにこれを自由に占有使用し、掲示物についても一切当局の許可を要しないこととされて来たもので、この使用関係は当局の明示の承認の下に公然と継続され慣行化して昭和四三年三月に及んだ。

(三)  ところが昭和四三年三月一一日被申請人より申請人らに対し、本件掲示板を撤去し新たに組合掲示板を前記合同庁舎七階中央附近の計画課前壁面および八階中央附近の会計課前壁面の二ケ所に設置する、掲示物についても予め当局の許可を受けること、等の申入れがなされた。

右申入に関して団体交渉が行われたが当局は態度をかえず、前記訓令第一六号をたてにとつて被申請人において実力を以て本件掲示板を撤去移動し且つ一切の掲示を許可にかからしめようとする態度を示している。

(四)  申請人らは本件掲示板について前記の経緯で占有使用権を有するものであり、その行使を庁舎の総括取締責任者としての権限によつて妨げようとする被申請人の行為は申請人らの自由な表現宣伝活動に対する不当な抑圧と介入、申請人らに対する団結権侵害を意図するものであつて不当労働行為に該当し且つ訓令第一六号に基く管理権の濫用である。よつて本件掲示板に対する占有使用権に基き被申請人の右不法な行為を差止める緊急の必要がある。

というにある。

二、よつて考えるに、記録によれば本件掲示板が公用財産たる申請人ら主張合同庁舎第一号館七、八階にその主張の大きさおよび位置関係で設置されていることおよび、申請人らにおいてこれを現に使用していること並びに、右七、八階の建物部分とその附属設備については被申請人において近畿地方財務局長からの使用許可に基き申請人ら主張訓令第一六号に則つてこれを管理取締りする権限と責任を有することが疎明されるところ、申請人らは行政庁たる被申請人において右訓令に基く総括取締責任者としての権限によつて本件掲示板を撤去するなどしようとしていると主張してその行為の差止を求めるものであるから、申請人ら主張の右掲示板の占有使用権が被申請人に対して何等かの意味で主張しうべきものであるとしても、申請人らの申請は被申請人のなすことあるべき処分或いは公権力の行使に当る行為をとらえてその違法不当を主張することに帰するものというべく、従つて本件申請は民事訴訟法による仮処分の対象となし得ないものをとらえた申立というほかなく、その余の点について判断するまでもなく不適法として却下を免れない。

よつて申請費用につき民事訴訟法第八九条第九三条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 横畠典夫)

別紙目録<省略>

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